■草枕の道
山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
住みにくさが高じると、安いところへ引き越したくなる。
どこへ越しても住みにくいと悟った時。詞が生まれて、画ができる。
で始まる夏目漱石の小説『草枕』は、漱石が熊本第五高等学校講師として赴任していた時、画家である友人と小天温泉への旅が舞台となっている。その歩いたルートと泊まった小天の宿をたどる『草枕の道』ハイキングコースが整備されている。川端康成が歩き出合った踊子を舞台にした小説『伊豆の踊子』からのハイキングコース『踊子歩道』と似通っていますが......。
2度目だが、最初の部分を一部ショートカットし、途中金峰連山の二ノ岳をピストンで挟んで歩いた。
コースは今が収穫の最盛期である「熊本みかん」畑の中、そして野出から小天までは有明海と対岸の雲仙岳を望みながらの山歩きであった。
■鎌研坂上~鳥越峠・峠の茶屋~岳本へ
漱石の小説『草枕』の冒頭の山路は鎌研坂と推測されていて、九州自然歩道<熊本>の金峰山コースも熊本市島崎の登山口から鎌研坂を登って来るのだが、この日はショートカットして鎌研坂を登ってきたところまでバスできて山行をスタート
。
『草枕の道』ではこの鳥越峠・野出峠と二つの峠を越えるが、小説『草枕』の一節「おい、と声をかけたが返事がない」はどちらの茶屋か特定出来ないようだ。
大将陣の稲の棚田にはユニークな案山子、そして正面に二ノ岳、三ノ岳が”来いよ来いよ”と手招き。
峠の茶屋から岳本への金峰山中腹に広がる果樹・園芸・野菜畑の中のハイキングコース
■石畳の道から野出へ
『石畳の道』はコースのハイライト、この道は生活道でなく街道だったんだろうな。
道の入口には漱石の ”家を出て 師走の雨に雨合羽” 句碑があり、漱石の旅の様子が伺われる。
■二ノ岳
金峰連山は金峰山を中央火口丘とするカルデラ式火山で、二ノ岳・三ノ岳・荒尾山など多くの外輪山があり阿蘇より古いようだ。
山頂からは西は有明海・天草・雲仙、東は三ノ岳・熊本市街・阿蘇と大パノラマが楽しめた。
九州自然歩道<熊本>は金峰山~二ノ岳~三ノ岳~半高山と金峰連山を縦走するコースとなっており、2010~2012年にかけて帰省した時に少しづつ歩きつないで42日かけて実歩行距離785kmを踏破済。この日はここで折り返した。
阿蘇カルデラから流れる白川、実家があるその堤防からの金峰連山
二ノ岳と三ノ岳は主峰金峰山の向こう側に隠れている。
■野出峠から小天温泉へ
野出峠の峠の茶屋は残ってなく、漱石の ”天草の 後ろに寒き 入日かな” の句碑のみ。
二ノ岳中腹斜面のミカン畑の中の道を、有明海~雲仙・天草を眺めながらノンビリハイキング。
ミカン畑の中の急坂にも石畳み道があった。
■小天温泉
『草枕』の舞台となっていて、漱石も旅で宿泊した前田家別邸、そして草枕関連の案内資料を展示した草枕交流館を見学。